堀公俊『今すぐできる!ファシリテーション 効果的なミーティングとプロジェクトを目指して』

 あるプロジェクトのファシリテーター役を引継いだ。そして、ファシリテーターとして参加した初回のミーティング、課題を時間内にさばききれず、派手に撃沈した。

 思えば、まわりに優秀なファシリテーターはいない。ぼくも見事にその仲間入りをしたわけだが、逆に考えたら、ファシリテーションのスキルを磨けば、まだまだ差別化できる余地がある。

 そろそろ40代、もはやベテランの域。いまからインプットできる総量には限りがある。それなら、同僚であれ外部の専門家であれ、まわりの知識や経験を活かしていく側に活路を見出すべきではないか。その活路は整備された道なのか、それとも悪路なのか。堀公俊氏の『今すぐできる!ファシリテーション』を読んでみた。

 ファシリテーターに求められるスキルは4つがある。場のデザインのスキル、対人関係のスキル、構造化のスキル、そして、合意形成のスキル、だ。極度の人見知りで会議の招集すら人一倍労力を要するし、典型的なコミュ障だし、話すことばはちんぷんかんぷん、意見をまとめるなんて夢のまた夢。そんなぼくでも、優秀なファシリテーターになれるのだろうか。

 ファシリテーションと聞いて頭に浮かぶのは、アイスブレイクだったりタイムキーパーだったり、地味な役割ばかり。前半で言及されるのはそうした会議の調整役といった役回りだが、後半から終盤にかけて描かれるのはゴリゴリの会議屋。なかなか刺激的だ。

 理想は、会議に参加する全員がそれぞれの役割をフルに発揮する会議。つまりは、楽しくて、結果もついてくる会議。こんな会議ならぜひとも参加したいし、そんな会議をつくりたいと心底感じた。

 目指すは、ハッピーファシリテーター。

三木雄信『世界のトップを10秒で納得させる資料の法則』

 世界のトップと働いているわけでもなければ、もちろん、世界のトップでもない。
 それでもも、圧倒的な資料づくりの技術を学びたいという思いから、ソフトバンクで孫正義氏のもと働いてきた三木雄信氏の『世界のトップを10秒で納得させる資料の法則』を手にした。

 先に読んでいた同氏の『「A4」一枚仕事術』が比較的軽めの内容であったのに対し、こちらは重量級の「法則」がひしめく。孫正義氏であれば一瞬で捨てられるダメな資料と、一流の優れた資料を対比しながら進んでいく。
 会議の議事録や「ワンメッセージ・ワンイメージ」のくだりは『「A4」一枚仕事術』と重なるところも多いが、特に後半、パレート図や回帰分析のあたりはソフトバンク流の真骨頂。

 孫正義氏の「これから回帰分析をしないやつの話は一切聞かない」という宣言はあまりにも強烈だ。
 仮にいまの会社の社長がこう宣言したら、ぼくはどうするだろう。大半はついていけないだろうから、そのまま聞いたふりだけで終わらせるか。それとも、これからは回帰分析の時代だから、と必死に喰らいつくか。20代であったら躊躇なく前者を選ぶだろうが、これから40代を迎えて、後者を選んでしまう可能性がなくもない。
 統計学。いつまでも苦手なままで終わらしていてはいけない。

前田鎌利『社内プレゼンの資料作成術』

 日本に戻ってきてから、やたらと社内プレゼンの機会が増えた。
 年を重ね、責任も増し、そういった機会が自然と多くなったというのはあるだろう。

 中国にいたときは、プレゼンすべき主なターゲットである現地のトップが身近にいたから、資料をつくりこんでプレゼンするまでもなく、ちょこちょことミーティングするだけで解決していた。その間、ぼくの社内プレゼン力はすっかり鈍ってしまった。

 そこで、ソフトバンクで孫正義氏相手にプレゼンを重ねてきた前田鎌利氏の『社内プレゼンの資料作成術』から学ぼうと一念発起。

 内向きな社内プレゼンを、少しでも効率的に、少しでも効果的に。

 シンプルとロジカル。シンプルかつロジカルな資料をつくりこめば、社内プレゼンは9割成功するというのが本書を貫くポイント。
 5枚から9枚のスライドを3分で終えるシンプルさ。現状報告としての課題と原因、提案としての解決策とその効果という筋道の通ったロジカルさ。そして、そのバックに控えるのが十分なアペンディックス。
 決裁者の視点に立ったこのシンプルかつロジカルなプレゼンによって、一発承認をもぎとる。

 もちろん、具体的な手法もふんだんに紹介されている。

 ひとつだけではなくふたつの案を出し、決裁者に選ばせる。
 スライドのサイズは見栄えがいい16:9ではなく見慣れた4:3にする。
 タイトルやキーメッセージは13文字以内。
 「Zの法則」もしくは「逆L字の法則」に基づいて、グラフとキーメッセージを配置する。
 棒グラフの増加の出発点や減少の終着点を「半分の高さ」に置く。
 ワンカラー効果を活用する。
 決裁者の「利き脳」を意識してプレゼンに臨む。
 決裁者の左目だけを見つめながら話す。

 などなど、すべてはシンプルかつロジカルというキーワードにつながっているから、徹頭徹尾、腹落ちしっぱなしだった。

 残念ながら、社内でこうしたシンプルかつロジカルなプレゼンにはまずお目にかかれないが、だからこその隗よりはじめよ。次のプレゼンが楽しみだ。

中尾隆一郎『最高の結果を出すKPIマネジメント』

 数字偏重。ご多分に漏れず、ぼくのKPIへのイメージはそれだった。

 KPIで管理せよ。しばしばそう促されるものの、経理という比較的定量化されにくいであろう業務領域において、KPIマネジメントは本当になじむのだろうか。
 KPIマネジメントがなじまないとしたら、代わりにどうマネジメントすべきか。

 判断材料として選んだのが、リクルートグループでKPIマネジメントを実践したKPIマネジメントの伝道師、中尾隆一郎氏の『最高の結果を出すKPIマネジメント』だった。

 KPIとは、事業成功の鍵を数値目標であらわしたものである。
 事業成功の鍵を別のことばにすると、最重要プロセス、いわゆるCSFやKSFと呼ばれるものである。
 事業の成功そのものの数値目標はKGIであり、つまりは、KPIはKSFを数値化した、KGIの達成に向けての先行指標に過ぎない。

 KSFを特定し、KPIを掲げたうえで、KGIの達成に邁進する。
 あまりに似た用語が多いのと、肝心のKSFの特定にまだ悩まずにいられないため、KPIマネジメントはもうしばらく保留する。

 ところで、本書はところどころに挿まれた図解がとても印象的だった。
 すべて白と黒の2色のみ。文字だけのシンプルなものもある。
決してキラキラのスライドではないが、妙にしっくりきたので、51枚の図をすべて保存した。

 次は、いかにシンプルで効果的な図をつくるか、がぼくにとってのKSFなのかもしれない。

伊賀泰代『生産性』

 

生産性

生産性

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 著者の伊賀泰代氏は、『最速のリーダー 最小の時間で最大の成果を上げる』の赤羽雄二氏と同じマッキンゼーつながり。

 生産性を向上させるとなったとき、付加価値の低い業務を非正規社員に任せるという対策になりがちだが、これでは生産性の低い仕事がいつまでも社内に温存されてしまう。これぞ、まさにいまの職場。

 『最速のリーダー』においては残業ゼロそのものが目的化されていたのに対し、『生産性』ではアフター残業ゼロに焦点があてられている。もちろん、『最速のリーダー』においても、残業をゼロにする目的や意義を十分説明しているものの、『生産性』ではより鮮明に描かれている。あくまでも相対的なものである。

 生産性を上げる方法として、改善により投入資源を小さくする、イノベーションにより投入資源を小さくする、改善により成果を大きくする、イノベーションにより成果を大きくするという4つの類型を提示している。
 『最速のリーダー』では、主に改善によるコストの低減を提示していた。一方、『生産性』は、残業ゼロの結果としてのイノベーションのための時間的な余裕を第一に挙げている。
 これは、普段残業ほぼゼロを実践しながらも、ルーチンの業務をいかに効率的にこなし、定時内で仕事を済ませるか、さらには有給休暇をどれだけ消化できるかに追われるだけのぼくが痛感する違いである。生産性と残業ゼロは必ずしも一致しない。残業ゼロを錦の御旗にしてしまうと、残業ゼロを実現した時点で成長は止まるリスクがある。残業ゼロからの生産性向上という次のステップに進んでいかなければならない。

 本書では、トップパフォーマーと呼ばれる上位数パーセントレベルの人材と、組織の大半を占めるアベレージパフォーマー、そして、いわゆる「社内選抜に漏れた中高年社員グループ」の生産性を上げるための心がまえを説いている。
 一応は課長試験に合格している身ながら、決して出世コースに乗っているわけではない、典型的なアベレージパフォーマーのぼくにとっては、第5章と第6章の内容が興味深い。年上ばかりのスタッフに向けて、ストップウォッチで日常業務の計測をしてもらったり、業務の棚卸をしてもらったりお願いするのは敷居が高いが、そこを克服してこそのマネジメントであり、リーダーシップ。
 いずれ、中国では一般的であったチームビルディング研修などもやってみたいものの、はてさて、どうなるやら。

赤羽雄二『最速のリーダー 最小の時間で最大の成果を上げる』

あなたは、最小の時間で、最大の成果を上げていますか?
また、部下や後輩の能力を引き上げ、チームとしての生産性を上げていますか?

 ある部門のマネージャー見習いを任じられた。今日はその初日。

 昨年、社内の課長試験に合格したものの、1年間、まだ昇進を見送られている。同様に足踏みするケースは少なくないが、やはり人間の性、気にならないわけがない。

 そんななか、今回の定期異動によって正式なマネージャーが不在となった部門に送られ、そこでのパフォーマンスを値踏みされる機会を得た。次の定期異動までの半年間、最速でリーダーシップを身につけ、最速で結果を出し、次のポジションへと進みたい。

 冒頭の問いかけからはじめる赤羽雄二氏の『最速のリーダー 最小の時間で最大の成果を上げる』にそのヒントを求めたのだが、本書を貫くテーマは「残業ゼロ」だった。
 実は、既にほぼ残業ゼロを実現できているホワイト企業にいるわが身。やや拍子抜けした。

 紙幅の大半が、経営者視点にとって残業ゼロを実現する意義と、その全社的な施策に割かれている。
 例えば、経営者は最優先で会議や書類を半分以下に減らすべきだとしている。
 また、残業ゼロによって社員の残業代という「実入り」が減るという懸念に対し、残業削減報奨金と貢献度給の導入を提案している。
 一介のマネージャーのの立場では、残業削減報奨金や貢献度給といった手法はとりづらい。前者はポケットマネーという裏技もあるが、このご時世、現実的ではない。

 それでも、リーダー見習いという立場にとって得られるところも多い。

 氏によると、時短を阻む「仕事は行ったり来たりするものである」という日本企業の伝統は、意思決定の遅さに由来するものである。経営者の意思決定の遅さは、その下にいる上司の指示のあいまいさにつながり、あいまいな指示しかできない上司はそれをこなせない部下に「できない部下」のレッテルを貼り、そのレッテルを貼られた部下はやる気を失う。そして、だらだらと残業をする。
 あいまいな指示しかできない上司は、「全部指示してしまうと、部下が考えなくなる」というそれらしいイイワケを用意しているが、その実は、高い視点からの助言に自信がなく、具体的な指示をできないだけなのである。

 最後の一文は、マネージャーになりきれないぼくに痛すぎるほど刺さった。自覚がありすぎるのだ。

 また、最速というキーワード第4章の「まずは部下より自分が変わる! 残業ゼロを実現する上司・リーダーの仕事術」と第5章の「知っていれば誰でも必ずできる! 部下の残業ゼロを実現する仕事術」が赤羽氏の本領発揮だ。

0.5秒でも短くなりそうな工夫は全部しています。毎日新しいものを見つけます。「この程度はいいや」という考えは完全に捨てて工夫し続けるのがポイントです。

 生産性向上への秒レベルの飽くなき欲求は、とにかく参考になる。

 一方、残業ゼロの先にハッピーな結末はあるのか。特に、ベテラン中心の組織がイノベーティブな組織に変革していけるのか。残業ゼロ実現後の実態を目にしているだけに、まだまだ探求は終わらない。